臨床バイオインフォマティシャンのブログ

臨床に近いバイオインフォマティクス初学者です。NGSによる変異解析を紹介します。

ClinGen SVIによるPS2&PM6基準の提言

解説 ClinGen SVI Recommendation of de novo criterion (PS2 & PM6)


ACMGガイドラインde novoバリアントを評価するための基準であるPS2およびPM6について、ClinGenのSequence Variant Interpretation working group (SVI WG)が提言している事項を解説します。

ClinGen元記事はこちら

元のACMG/AMPガイドラインPS2およびPM6の基準はそれぞれ以下の通りです。

PS2: de novoバリアントであること (親子関係が確証されている)
PM6: de novoバリアントであること (ただし、親子関係が確証されていない)


SVI WGは上記のde novoバリアント基準に対して、発端者数および表現型との一貫性を評価の重みに加えた基準を提言しています。評価方法を表1にまとめました。当該バリアントを有する発端者数だけ点数を合算し、最終的な点数から表2に示すいずれかの基準に分類し評価します

表1. de novoとして検出された発端者あたりの点数
表現型との一貫性 発端者あたりの点数
de novoかつ
親子関係が確証されている
de novoかつ
親子関係が確証されていない
表現型と遺伝子の特異性が高い 2 1
表現型は遺伝子と一致しているが、
特異性は高くない
1 0.5
表現型は遺伝子は一致しているが、
特異性は高くなく、かつ高い遺伝的異質性を持つ**
0.5 0.25
表現型は遺伝子と一致していない 0 0

** 最終的な評価値は最大1点とする場合がある

表2. 根拠の強さを段階的に評価した*de novo*バリアント評価基準
Supporting
(PS2_Supporting or PM6_Supporting)
Moderate
(PS2_Moderate or PM6_Moderate)
Strong
(PS2_Strong or PM6_Strong)
VeryStrong
(PS2_VeryStrong or PM6_VeryStrong)
0.5 1 2 4

注意事項

de novo基準について、ACMG/AMPガイドラインでは、患者の表現型は遺伝子/疾患と一致していなければなりません。したがって、今回の基準で分類する場合、患者の表現型が一致しているが特異性が高くない場合、評価点数を下げるよう提言しています。

例.

  • 早期乳児てんかん性脳症 (early infantile epileptic encephalopathy; EIEE)の患者で検出された、親子関係が確証されたde novoSIK1遺伝子バリアントは、1点となる。本バリアントによる発端者が1名の場合、PS2_Moderateが適応される。

    • さらに、本バリアントについて、親子関係が確証されたde novoバリアントとして二人の発端者が確認された場合、最終点数は3点となる。この場合、基準はPS2_Strongと分類される (PS2_VeryStrongには到達しない点に注意すること)。

  • 非症候性知的障害患者で認められた親子関係が確証されたde novoASH1L遺伝子バリアントは、0.5点となる。本バリアントによる発端者数が1名のみの場合、PS2_Supportingが適応される。

    • さらに、本バリアントについて、親子関係が確証されたde novoとして1名の発端者が確認された場合、最終点数は1点となる。この場合、PS2_Moderateが適応される。

遺伝形式を考慮したde novoバリアントの評価の例

  • X連鎖性疾患: 非罹患の保因者である母親におけるde novoバリアントについても、家族歴が一致している (例. 母親の兄弟に罹患者がいない、罹患している子以外に罹患している男性親族がいない)場合、de novo基準は適応される

  • 常染色体潜性遺伝形式: 常染色体潜性遺伝形式の遺伝子において、他に病的バリアントが検出されておらず、de novoバリアントが検出された場合、de novo基準を最終評価から一段階下げるべき

  • モザイク: 生殖細胞モザイク (複数の罹患している兄弟が認められるが、両親は当該バリアントが検出されない)が疑われる場合、親子関係が確証されたいる場合のみに限り、de novo基準を適応する